The Remains of Runners ~走者の追憶~

陸上競技の海外記事を中心に執筆します。

陸上競技の死亡事故事例 (Accidents On the Track)

基本的に選手同士のフィジカルコンタクトが少ない陸上競技では、物理的な要因による怪我や事故はあまり見られません。

 

しかしながら、陸上競技の練習や試合では大勢の選手が同じトラック・フィールドで動き回るがゆえの事故が発生します。

 

今回は国内外で起きた事故を紹介することで、市民ランナー、選手、保護者、そして指導者の方々に、今一度安全管理について考えてもらいたいです。

 

1.事例集

①事例1(1995年12月13日)

順天堂大学陸上競技部箱根駅伝に備えた練習で、国道を走っていた際にトラックにはねられ死亡。

 

②事例2(1996年8月19日)

東海大学の陸上部員の頭に、後輩の投げたハンマーが直撃し死亡。

 

③事例3(1998年6月27日)

山梨学院大学3年生の陸上競技部員は、屋内プールで潜水トレーニングをしていた。息を止めるトレーニングをしていた際、5分を過ぎても上がってこず、部員が引き揚げたが、その後死亡。

 

④事例4(2000年6月30日)

中学校にて体育の授業中、走幅跳をしていた生徒が砂場わきにある鉄棒に頭を打ち付け、急性硬膜下血腫で死亡。

 

⑤事例5(2008年5月)

横浜で行われた県高校総体陸上で、ウォーミングアップをしていた選手が、トラックを横切った生徒に衝突した。選手は頭を強打し同年7月に死亡。

 

⑥事例6(2017年12月20日

群馬県の高校で、生徒の投げたハンマーがサッカー部員の頭に直撃し、救急搬送されたが死亡。

 

2.事故防止のための取り組み

以上のように、体育の授業中、部活動中、大会のアップ中、外での練習中、、、危険は常に選手の周りにあります。

 

これら事件を踏まえて、対応策を考えました。

①一般道路を走るときは、見晴らしが良い場所で明るい時間帯に行う。

②様々なスポーツ部員でグラウンドを共有する場合、危機回避が難しい投擲種目の練習や、野球のバッティング、トラック側に向けたサッカーのシュート練習などは控える。また、練習を行う場合も必ず指導者の指示を仰ぎ、電灯やネットなどの安全対策を行う。

③大会でのアップ中、トラックを走る前は「○レーン、走ります!」と声を掛けてから走る。また、トラックを横切る場合は十分に左右を確認したうえで、選手に伝わるように手を挙げたり、声掛けを行う。

 

私の考えた対応策は、誰でも思い浮かぶような簡単なものです。しかし、日本の部活動の現状を見ると、その程度の危機管理も十分に行われていないように感じます。

 

実際に私も、陸上競技の練習中にサッカーボールが直撃したことや、野球部のノックを警戒しながら走っていた記憶があります。また、大会でのアップで衝突する選手を見たこともあります。

 

このような小さな事故は、あらゆる場所で日常的に発生していると思います。

 

選手には、周りを思いやる気持ちを持ち、また指導者には大切な選手の命を預かっているという自覚を持ち、スポーツに携わってもらいたいですね。

 

《参考資料》

朝日新聞「練習中にはねられ、順天堂大選手死亡 箱根駅伝を前に」1995年12月24日付朝刊、2社、22頁。

朝日新聞「ハンマー直撃、陸上部員死亡 平塚で東海大生/神奈川」1996年8月20日付朝刊、神奈川。

朝日新聞「潜水の訓練中、陸上部員が水死 山梨学院大」1998年6月28日付朝刊、1社、35頁。

朝日新聞「幅跳びの記録測定中に鉄棒で頭打ち生徒死亡 春江中/福井」2000年7月2日付朝刊、福井1、33頁。

朝日新聞「損害賠償を求め、遺族が県など提訴 県高校総体選手衝突死/神奈川県」2010年8月6日付朝刊、横浜・1地方、27頁。

朝日新聞「陸上ハンマー直撃、サッカー部員死亡 群馬の高2、部活中に」2017年12月21日付朝刊、2社会、34頁。